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ずっと前から考えてた。

アンタと付き合って初めてのクリスマスは、うんとオトナなデートすること。
スペシャルなプレゼントを贈って、もうそりゃサイコー!なアンタの笑顔を見ること。
下心なんてないし!・・・なんて言ったら、正直オレ、嘘吐きです。
だけどオレがそれだけ気合入れたい!って思うのは、それだけアンタと過ごすクリスマスが・・・ちゃん自身が、すっげぇ特別だってコト。



オトナのデート・・・は、まあ。
オレの情報力と行動力をもって、気合いれてたてたプランはカンッペキ。
・・・ま、高校生がちょっちガンバって貯めた予算の範囲内で、だけど。
デートに着てく服のコーディネートもバッチリで、明日に迫ったクリスマスイブ当日が待ち遠しいったらない、新名旬平18歳です!




「・・・・・・なんてねー。」

空元気ふり絞ったモノローグの後
ベッドの上に思いっきり手足を広げて、すっかり見慣れた天井に向けて吐き出した声は、どうしよーもねぇってくらい乾いたもので。

ああもう、すっげやんなっちゃうんですけどマジで。



この憂鬱の原因がなにか、なんてコトは、コレ以上ないってくらいハッキリしてる。
投げやりな視線を横に向けると、勉強机の引き出しの置くから溢れ出す、もうなんだよって存在感。
・・・わかってます。そんなのオレの気持ちのモンダイです。



ため息と共に身体を起こし、机の引き出しを思い切り引っ張ると、奥の方にしまい込んでもあっさりと目に入る小箱。
ああもう、わかりました。ちゃんと現実と向き合うからもう許してよ。



箱を軽く振ると、蓋が緩んで中身が飛び出した。
机の上にころりと小さな音を立てて転がるそれが、オレの憂鬱の原因。

「・・・あーーーーーもう、コレってマジなくねぇ?」

それは小さなシルバーリング。・・・そう、オレの作品。



アンタと付き合ってはじめてのクリスマスには、スペシャルなプレゼントを贈る。
・・・オレが初めて、大切な人のために作った指輪を。

「ああもう、こんなの贈れっかよ・・・」

体ん中全部空ッけつになるんじゃないかってくらい、深く長いため息を吐きながらしゃがみこむと、手にした箱から次々に失敗作が転がり出た。



・・・クレイシルバーで作るのはかなり上手くなったって思ってたんだ。マジで。
自分用ならそれなりに高確率で、気に入るもんが出来上がるし。
だから結構自信もあって、それはそれは意気込んで作り出したわけだよ、オレ。
・・・なのに結果はこの始末。

誰かのために作るのがこんなに難しいなんて、思ってもみなかった。
特に大切で特別な彼女に贈るなら、それは尚のこと。
時間の許す限り作り続けて、それでもゼンゼン満足できるものができなくて。
どんどん自信なくしたオレがプレゼントに用意したのは、結局既製品の指輪。


指輪、ってだけでもかなり特別なプレゼントだとは思う。
もちろん、真剣に選んでそれなりに値も張るデザイナーのだし。
当然ちゃんのキレイな指に似合うやつ、ちゃんと見つけたし!
コレならゼッタイ、ちゃんに喜んでもらえるって自信ある!

・・・・・・自信ある、けど。




「あああああ!!もう、いい加減にしろって!!」

明日はもうイブだっていうのに、いつまで引きずってんだよオレ!
さっさと切り替えて、明日を一生忘れらんねーくらいサイコーな日にすればいいんだって。
ちゃんのすっげイイ顔見られれば、こんなモヤモヤ吹っ飛ぶに決まってる。それ正解!



フローリングの上に転がった失敗作のシルバー。
数を数える気にもならないそれを一気に掴んで箱にしまう。
さすがに捨てるには忍びない・・・って、オレどんだけ情けねーの?
とにかく箱を目に付かないクローゼットの奥にしまいこんで、強引に気分を切り替えた。








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